2017年6月23日金曜日

現代都市政策研究会2017年5月例会感想


試みられている壮大な実験~渋谷区

T.       M.
5月例会は「ダイバーシティ(多様性社会)の実現に向けて~渋谷区多様性社会推進条例制定から新基本構想を通じて考える~」をテーマとした早川淳会員の報告だった。

話の内容は、早川さんが自治体学会誌に寄稿した「ダイバーシティ(多様性)共生社会への挑戦をベースにパワーポイントと渋谷区基本構想バンドブック「渋谷区 ちがいをちからに変える街」を使って(1)長谷川区政の流れ(2)渋谷区のダイバーシティ政策の進展(3)ダイバーシティ×インクルージョン=イノベーション!!3つに分けて話が進められた。

まず、早川さんは、長谷川区政の流れを、早川さんが1990年代にカリフォルニアへ調査に行った時のテーマになぞらへ「アフォーマティブアクション(これまで不公正な扱いを受けてきた黒人など少数派の人々に対して教育や雇用などの機会の優先権を与える)からダイバーシティ(様々な人が誰でもOKな社会)へと説明された。

そして、福祉も一部の貧困層から高齢者等普遍的福祉に変わり、また障害者の範囲も身体障害者から知的、精神、難病、さらにはLGBTなども含み、広がっていることを考えると、税の再配分による福祉(公助)が成り立たなくなり、お互いが助け合う(共助)の世の中になるのではないか。そんなことを考えると、従来の福祉をどう捉えたらよいか早川さんからの問題提起もあった。

渋谷区のダイバーシティ政策の進展において象徴的なのが渋谷区新基本構想ハンドブック「渋谷区 ちがいをちからに変える街」だ。早川さん曰く、詩のような基本構想と表現したように、子育て・教育・生涯学習、福祉といった7つのテーマごとにつづられている。理念はもっともなのだが、理念をどのように政策に結び付けていくのかが肝なのだがと心配してしまうのは、長年、行政マンをしていた私の性(さが)だろうか。

「ダイバーシティ×インクルージョン=リノベーション」、つまり、多様性を包摂する社会こそが新たなか革新を起こすといった意味だろうか。確かに早川さんの話を聞くと、そうとも思える。

意見交換では、(1)「共助」が強調され過ぎていないか(2)コンセプトをどう政策に結び付けていくのか(3)ダイバーシティやインクルージョンといったお題はいいが区民の生活実感とかけ離れていないかなど様々な意見が飛び出した。

私もニューヨークやサンフランシスコへ「まちづくりと合意形成」をテーマに様々な住民活動団体のヒヤリングを行ったことがある。そこで感じたのは、アメリカでは基本的に行政(公助)は信用されておらず、そこに様々な住民団体が活動するフィールド(公助の世界)があるということだ。果たして、日本ではそこまで行政は信頼を失っているのだろうか。もちろん行政(公助)で何もかもサービスを賄うことには限界がある。しかし、「公助」をきちっと位置づけたうえで、補えない部分を皆(「共助」)でカバーしていくという発想がセオリーではないかと思うのは私だけなのだろうか?

いずれにしても、LGBTのみがマスコミで取り上げられがちだが、ダイバーシティ(多様性)社会の実現という壮大な実験が渋谷区で試みられているということを改めて感じることができた報告会だった。

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