2017年4月18日火曜日

現代都市政策研究会2017年1月例会感想


1月定例会「保育園建設を通じて考える子育て支援の今とこれから~」感想


T.        K. 



「保育園落ちた。日本死ね」の匿名のブログで日本中に広がった保育園の待機児問題。今や社会問題となっていますが、開園予定地の周辺住民による反対で開園できないケースが出てきています。住民の反対にどのように対応すべきか。多くの自治体で課題となる中、大石田久宗さん(会員・社会福祉法人三鷹市社会福祉事業団理事)の経験はとても参考になる例でした。



■制度が変わった。支えあいで園をつくる

 大石田さんのお話は、2017年1月22日に定例会で伺いました。概要は、保育には「認可保育園」と「無認可保育園」に大きく分かれ、「認可保育園」にも公立保育園、公設民営保育園、公私連携型民設民営保育園、民間保育園、小規模保育園、家庭的保育、事業所内保育、居宅訪問型保育とさらに別れている。さらに、子ども子育て支援新制度により保育の概念が変わった。「施し」から「ニーズに合わせる政策」となり、社会保障として基礎自治体の仕事と変わったことなど複雑な制度の解説と新制度で位置づけられた「公私連携型民設民営保育園」についても話されていました。

「公私連携型民設民営保育園」は、公立公営保育園には補助金がつかなくなる現状(地方交付税不交付団体)で自治体が関与して設立した外郭団体により保育園を運営すると民間となるため補助金が得られるようになること。公立園の保育士と連携がしやすくなり、公立と同じ方針の保育園をつくることで保育の質を高めることへつながるメリットがあるとされていました。

 そのさい、経費面だけでなく、市民にとってすばらしい保育園とは何か。新制度で保育園はニーズに対応することが求められるようになったが、サービスではなく、ニーズに対応できるようにするために、保護者、園長、保育士、事業者が支えあいで保育園をつくることが必要だとされていたことは印象に残りました。

量の増加だけに注目しがちな保育園ですが、最も考えなくてはならないのは子どもが育つ環境です。ニーズに合わせるだけではサービス競争になりかねません。今後の三鷹赤とんぼ保育園がどのようになるのか注目したいと思いました。



■保育園建設を進める力

 保育園建設に反対する住民がいる場合の対応も参考になりました。

 三鷹赤とんぼ保育園は、都市計画道路予定地と幹線道路に二面が面しているため住宅街の中に建設するケースとは異なりますが、大石田さんは市職員時代から周辺住民と人間関係があり、意見を言い合える関係にあったことで反対する人、賛成する人が見えていたとされていました。

 保育園建設で問題になるのは、対立だけが深まることにあります。この人間関係を持てることは、市の職員だったからこそと思えました。反対と建設を進めることの対立点は、YESNOの二者択一ではなく中間策もあるはずです。そこの調整ができるかできないかが建設を進めることができるかの重要なポイントです。

 事業者任せ、あるいは、担当部課まかせではなく人間関係を持つ職員がいたことで保育園建設できた好例だと思いました。

 ただし、反対に理由があれば対応するが、理由が見えない場合には戦うしかないとの覚悟を持っていたと話されていたように、必要だと職員自身が思い、対応する職員に権限が任せられていたことも力になったそうです。このあたりをフォローできる体制があるかも重要に思えました。

 また、保育園建設にあたって、隣接する公会堂の改築も行っています。住民にメリットがある事業が平行で行われると関心が保育園だけに集中しませんので注目したい手法だと思いました。

 他の自治体でも参考になると思いました。

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